今度は空気を相互作用のない気体として、密度分布を計算します。空気内の分子はお互いにぶつかり合わず、スーパーボールのように地上から上空まで跳ね回ります。
地表で30℃の窒素分子を考えます。30℃を速度に換算すると、519m/s、垂直方向zの成分は300m/sとなります。
この初速度からの最高到達点をz=hとすると、エネルギー保存の法則から、
h = 4600m
となります。
同じ方法で他の分子を計算すると、元素の重さによって初速度が変わり、最高点は
h = 4000m (酸素)
h = 64000m (水素)
上空は水素ばかりになります(?)上空の大気の組成は地上80kmまで地上とほぼ同じなので、大気の組成が再現できていないです。
次に、窒素分子のみの大気を仮定して、高度zの分子の密度を求めます。全分子が地上で同じ速度とします(仮定)。密度が滞空時間に比例すると仮定して計算すると、
n(z) = n(0)(h/(h-z))^(1/2)
気体分子の密度は上空ほど高くなり、高度z=hの寸前で発散します。各分子の初速度にばらつきがあるとしても、上空に高濃度領域が出ることは変わらず、角柱に袋詰め空気を重ねたモデルとは全く異なる結果です。
温度・圧力分布は、高度z=h付近で速度の垂直成分だけが0になってしまうので、定義できません。『1次元気体』と仮定すれば、垂直成分のみで温度を定義して、
T(z) = T(0)(h-z)/h
P(z) = P(0)((h-z)/h)^(1/2)
どちらも、高度z=hで0になります。上空に行くほど圧力も気温も低くなるという点では、良さそうな結果です。 大外れ!関数形を見ると、このモデルでは何も説明できないことがわかります。
このモデルの怪しいところは、高度z=hで、速度の水平成分が地上と変わらないところです。この位置では濃度が極端に上がるので、分子の衝突が起こり、運動の向きが垂直方向に変わる可能性も大きくなります。つまり、水平方向の運動が垂直方向の運動の小さな熱源になります。 (後で考察したところ、分子の衝突は温度一定に関係ありませんでした。)
非理想気体の場合、最高高度hで全ての運動エネルギーがポテンシャルエネルギーに変わると仮定すれば、hは理想気体の3倍になります。 (後できっちり計算しました。)
窒素なら高度14000m、対流圏の高度は11km、ほぼ同じオーダーです!まあ良さそうですね(^-^)
実際の空気では、ランダウ本のモデルと理想気体のモデルの間を取ったような濃度分布になると想像できます。
続く。
次回:[重力と気体の熱力学]重力下の理想スーパーボール気体---袋詰めを重ねたモデル #mixi_diary 早咲の日記 2019/02/28/1970558533
参考:
対流圏 - Wikipwdia(2019/2/28)
大気の圧力 国際標準大気 - Wikipedia(2019/6/14)
地球の大気 地球の大気 - Wikipedia(2019/6/14)
====2020-11-22 16:15
イラストを作っているときに、モデルのおかしいところがわかりました。赤で書き込んである部分です。
大気の計算をする場合、気体は平均値では扱えなくて、Maxwell分布が絶対に必要です。やってみないと、どこが重要なのかわからないものですね(^^;
うまくいった話はこちらです。
[重力と気体の熱力学]重力下の理想気体---Maxwellの速度分布 #mixi_diary 早咲の日記 2019/05/13/1971506018