魔女の小さな冒険

魔女のちいさな探検

ゆっくりゆっくり進みます。

液体の表面張力が固体より小さくなるくだりは

 『結晶は生きている』のオストワルドの段階則p.75〜にて。
 オストワルドの段階則とは、気体中で固体粒が核生成するとき、最初に準安定な微小液滴が生成して、大きくなると固体粒に変わるというものです。

 ここでは、気体-液体間の表面張力が、気体-固体間の表面張力より小さいという一般論が出てきます。説明として、液体の方が内部の結合エネルギーが小さいので、断面を作っても切断のエネルギーが小さい、ということです。

 でも、説明に不満。
 結晶の表面は温度を上げていくと、ラフニング転移を起こします。ラフニング転移とは、結晶を結晶面に沿って二つに切ったつるつるの断面から、そこに分子の粉をまぶしたような薄い凹凸ある表面へ転移することです。原因は、高温時に自由エネルギーのエントロピー項が大きく寄与し、粗れた面のほうが自由エネルギーが下がることです。凹凸が多いと、エネルギーは高いですが、形のエントロピーは大きいです。液体の表面がどんなものかはわかりませんが、粗い表面と似たようなものでしょう。

 テキストのようにエネルギー項だけで説明すると、つるつるの結晶表面のほうがエネルギーが小さく、液体表面は大きくなってしまいます。自由エネルギーと考えると、液体内部の自由エネルギーが結晶より高いのに、『半分に切る』操作でできた粗い表面では、結晶のつるつるの表面より自由エネルギーが小さくなるのかどうか、直感的には判りません。
 物質毎に調べなくてはいけない、面倒臭い案件のように思えます。

 さらに、温度によっては結晶の表面が粗いこともあるのだから、液体の表面が2次元結晶になることもあるはずです。
 今は、もっと巧い説明が為されているのではないかな?

 尤も、水と氷を想定するなら、一般論は役に立たなさそうですが(^^;

参考:黒田登志雄(1984).『結結晶は生きている : その成長と形の変化のしくみ 』サイエンス社

結晶は生きている : その成長と形の変化のしくみ (サイエンス社): 1984|書誌詳細|国立国会図書館サーチ