魔女の小さな冒険

魔女のちいさな探検

ゆっくりゆっくり進みます。

気化モデル:水蒸気が水面に当たったら全部くっつく仮定

 これまでは、気化熱がどれだけ空気や体を冷やすのか、熱平衡状態で議論してきました。今度は、濡れた服が冷たい感じを考察します。

 気温30℃湿度100%の空気が1m³の立方体の中にあるとします。この空気中の水分子は、x方向に平均速度374m/sで飛んでいます。理想気体ならば、ひとつの水分子が箱の中を1sでx方向に187往復します。
 ここで、箱の側面x=0mが水面だとします。
 水面にぶつかった水分子は、全て水になると仮定します。そして、一定温度で水面から蒸発する水分子の数は、飽和状態のとき飛び込む数と同じと仮定します。
 この2つの仮定で、空気中の水蒸気量は飽和状態が保たれます。最初に湿度が100%に満たなくても、水に飛び込む水分子より蒸発する水分子の方が多くなって、どんどん湿度が上がるわけです。良さそう(^-^)

 では、30℃湿度0%の乾燥空気1m³に、30gの水を蒸発させます。x=0m面に30℃の水の壁、他の面に30℃の熱源を想定します。熱源が無いと、気温が下がって蒸発しきれないからね(^^;

 思考実験スタート!
 開始から0.0053s後に最初に蒸発した水分子が1往復。この間に30g蒸発して飽和状態に達成(チーン!)早すぎ!乾燥空気に目や肺を晒すと、大変危険だという結果になりました('д')

 まてまてまて(^^;

 時間が非常に短いので、熱や水分子の拡散が本当にこんなに速いのか、ちゃんと調べるべきですね。
 空気が理想気体でなければ、水面から飛び出した水分子は反対側の壁に到達するずいぶん手前で他の分子にぶつかって戻って来るはずです。そうなれば水面付近だけ飽和状態になって水から飛び出した分だけ戻って来るので、実質の蒸発はそれほど速くはなくなるはずです。拡散律速です。
 更に、分子が端から端まで飛んで運動エネルギーを伝える訳ではないので、空気の熱伝導の速さは水分子の飛ぶ速さよりずっと遅いと考えられます。水面付近の空気や水は気化熱で低温になるはずです。低温になれば、飽和水蒸気量もずっと下がるので、蒸発も遅くなります。

 そもそも、最初の仮定が間違っているのもしれません。水はいかにも表面張力がある液体です。水面の水分子はレゴブロックをバケツに放り込んだような完全なバラバラではなく、水分子同士の結合しやすい方向を面内の他の分子に向けているでしょう。イメージとしては、ある一瞬を捉えると、水表面の水分子数個が氷の結晶の表面ように配列していて、飛び込んできた水分子は結合しにくい向きだとそのまま跳ね返されます。界面律速です。
 そうすると、水面に当たる水分子の何割かが水に吸収されます。飽和状態では吸収量と蒸発量が同じくなります。この仮定なら、乾燥空気に当たっても、目や肺が急速に乾く事は無いかもしれません(^-^)

 完全にラフなはずの液体表面に界面律速の仮定は聞いたことがないですが、拡散律速だけでは、風が吹いたときの蒸発の速さが洒落にならないと思います。界面律速もありうると思います。計算してみないとね!