魔女の小さな冒険

魔女のちいさな探検

ゆっくりゆっくり進みます。

フィックの法則

 前回は、水蒸気濃度の拡散方程式をガチで解きました。拡散のみを考えると、1m拡散するのに数時間、1mの箱が均一に飽和するのに1日程度かかることがわかりました。

 確認のため、『フィックの法則』で水面からの蒸発量を計算します。
 モデルは同じく、気温30℃、水温30℃で、1m³の立方体の1面だけ水面。蒸発熱は無し。
 水面から箱内への流れ J(x,t) の式はフィックの法則で、

m J(x,t) = - D d² c(x,t) / dx²

x は水面からの距離、t は蒸発開始からの時間、m は水分子の質量、D は拡散係数、c(x,t) は空気中の水蒸気の質量密度です。
 全蒸発量は、水面 x=0 で、mJ(x,t) を時間で積分します。これは手で積分できて、蒸発量 = 飽和水蒸気量となりました。めでたしめでたし(^-^)

 更に、時間 t での蒸発量をPerlで計算しました。1m³の部屋で湿度が0%から50%まで上がる拡散時間は2.5時間、90%まで上がる拡散時間は11時間でした。
 桁あわせの計算をして、幅10cmの箱を湿度50%まで上げる拡散時間は89s、1cmの拡散時間は0.89sです。
 拡散による蒸発速度は、遠くに拡散すると、距離の2乗も時間がかかるのが特徴です。

 前回も出てきた上田政文先生の、葉の表面の水蒸気分布を調べた論文では、水蒸気分布を使って、葉の表と裏の水蒸気蒸散速度を調べていました。蒸散速度を調べるのだから、葉の表面近くの、ほんの狭い領域で水蒸気量が測れれば十分です。部屋全体が水蒸気で飽和するとか、関係無かったですね(^^;

 ところで、蒸発の速度がわかったということは、熱を奪われる速度もわかったということです。拡散律速での蒸発速度は時間t=0のときが最も大きいので、乾きはじめが一番寒いかもしれません。人間と服には他にもたくさん要因があるので、そうならないかもしれませんが(^^;