魔女の小さな冒険

魔女のちいさな探検

ゆっくりゆっくり進みます。

水蒸気の拡散時間

 拡散方向をxに限定したとき、水蒸気濃度cの拡散方程式は
dc/dt=Dd²c/dx²

 拡散方程式から、蒸発した水蒸気が水面近くから空気全体に充満する時間を計算します。
 各辺1mの空気の入った箱があって、箱の側面x=0が水面だとします。熱の拡散を考えなくて良いように、水面側の壁に熱源があって、水面は30℃に保ちます。
 一定温度で水面から蒸発する水分子の数は、一定と仮定します。

 水蒸気濃度cの拡散方程式は
dc/dt=Dd²c/dx²

呪文『一次関数の方程式の解はフーリエ展開することができて、指数関数の重ね合わせで表現できる』を使います。
 水蒸気濃度を
c_k exp(ikx-t/τ_k)
とします。i=√(-1)、kはフーリエ展開の波数で、c、τは初期条件などで決まるパラメーターです。拡散方程式に代入して、
τ_k=1/(k²D)
拡散時間、あるいは不均一の解消時間は長さの2乗に比例します。最終的な拡散時間は箱全体を表すk=π/L_xから求められて、(L_x=1m)
τ=1/(π²D)
となります。
 水蒸気の拡散係数の実験値D=2.635×10^(-5)m²/sを使うと、1mの拡散時間は1.07時間と出ました。洗濯物が乾いてくる時間スケールくらいで、良さそうな結果です(^-^)
 同じように、10cmの拡散時間は40s、1cmの拡散時間は0.4sと出ました。対流でゆっくり空気が動いたり、風が吹いたら蒸発はものすごく速いことになります。家の中で除湿・扇風機で洗濯物を干すと、6〜8時間かかるので、やはり蒸発速度は拡散律速だけでは説明できないと思われます。

 水蒸気は、拡散距離を短くしてやれば、うんと速く蒸発できます。
 ドライヤーを使うときには、髪一本一本の周りの空気を入れ換えるように、手で髪をよく膨らませると早そうです。気化熱もすごいので、髪が温くなる程度の温風も理にかなっています(^-^)
 衣類乾燥機の効率を上げるには、遠赤外線等で衣類の温度を直接保ちつつ、大量の空気を吹き込むのが良さそうです。湿ったままで温度を上げても、乾燥ドラムサイズの空気では限界があります。

(イラストは、拡散係数を理論値2.2×10^(-5)m²/sとした)