魔女の小さな冒険

魔女のちいさな探検

ゆっくりゆっくり進みます。

結晶表面のラフニングと色つやと

 夜中にふっと目を覚まして、昔、金属材料研究所で、Tangさんと永井さんが論文の量産をしていたことを思い出したのですね。ちょっとうろ覚えなのですが、永井さんは実験担当、陽電子・電子対消滅を使って原子の内殻電子のエネルギーを測定してました。Tangさんは計算担当、第一原理計算で、同じ元素の電子のエネルギーを算出。結果を二人で合わせると、バシバシ合っちゃう感じだったと思います。

 それで、結晶のラフニングも実験と合わせてみたら良いのでは、と思い当たりました。
 以前書いたと思うのですが、いや、書いてないかな?結晶の安定な形、平衡形は、カクカクした形というイメージがあります。でも、結晶の温度を上げていくと、角が取れて面の部分がだんだん小さくなって、最後には結晶全体が丸っこい形になります。融解の途中に丸くなるのとは意味が違って、平衡形が丸いのです。これがラフニングです。

 私が勉強した時代の結晶のモデルは、結晶の表面の原子がおもちゃのブロックのように、平らに並んでいるものでした。温度が高いと、表面の所々に階段みたいな段差が出来て、遠くから見ると厚紙を等高線に合わせて作った地形図みたいになります。
 この段差による薄い凸凹は、温度を上げていくと増えていって、面の向きによる表面エネルギーの差が無くなります。表面エネルギーはほぼ表面張力と一緒。表面張力がどの向きでも同じくなれば、結晶は水滴のように丸くなるのです。

 こんな風に表面が凸凹ざらざらになるのをラフニングと言います。ラフニングで結晶は丸くなります。

 本当に?
 私の想像はこうです。
 以前、帯電コロイドが斥力で結晶化するシミュレーションをしたときの話です。液体と固体のコロイド粒子を接触させておいて、時間が経つとどちらが優勢になるか調べました。そしたら、固体の粒子が、熱振動で配置がぐちゃぐちゃになっちゃって、ぱっと見どこが境界か判らなくなってしまいました。
 当時は仕方がないので、ある程度の時間を取って、平均的な位置から液体と固体を判別しました。
 ところで、このぐちゃぐちゃ振動って、実は本質的なのだと思うのです。
 融点近くで液体と共存するような温度では、固体の表面がカッチリ固まっているとは限りません。固体としての結合の弱い表面付近の原子は、熱振動が大きくなってプルプル震え、亀裂の出来かけみたいな格子欠陥が、表面付近を走り回っているでしょう。これがラフニングの正体だと思うのです。

 思い付いたのはよいのですが、どちらのモデルでも、表面エネルギーを計算するためには統計処理するので、高温でラフニングを起こすのは同じ。だから、新しいモデルを立てても、検証のしようがないだろうなと思いました。

 ところで、私は最近Twitterで、気象学者の荒木健太郎さんの #霜活 を見ています。この方は露が凍って、中が虹色のオパールみたいに光る写真を毎日出しています。春になったら、凍っていない写真も増えました。
 こんな風に、光学的に表面状態を調べる事は出来ないのかな?凸凹ラフニングとプルプルラフニングでは、光沢、色つや、反射率、表面の厚さが変わってこないかな?凸凹は若干白っぽくなるとか、どうでしょう。
 うまくしたら、虹色に光ったりして(^-^)
 実験だと、ラフニング温度での表面の色つやと、そこから急冷したときの色つやとで、何か差が出たら面白そうです。

 表面の反射率と言えば、先日、電車に乗った時、車窓に張った広告が面白かったです。ガラスに20cmくらいの小さな広告のシールが貼られていて、そのまわりのガラスがぐるりと四角く明るいのです。まるでガラスに穴があいて、広告のシールが浮いているようです。よく見ると、広告の上からはみ出すように透明のシールが貼られていて、シールの部分だけ外の景色が明るく見えました。
 重ねた方が透過率が高いなんて、すごいな。いやいや、これはきっと、表面処理と同じで、反射率が下がったってやつかな。おもしろいので写真を撮りたかったのですが、駅に着いてしまいました。残念(^^;

 ラフニングの光学的な議論って、誰かやってそうですよね。黒田先生の本には無かったから、もう少し新しい話かもしれません。やっているとしたら、MDの森さんとか、その後継者とかライバルとかでしょうか。
 どうやって計算しているのでしょう。やっぱり、電磁気で出てきた誘電率?計算してみたら凸凹もプルプルも変わらなかったりして(^^;
 気になるな〜。