魔女の小さな冒険

魔女のちいさな探検

ゆっくりゆっくり進みます。

美しい言葉で育てた氷の結晶は

 学生の頃、美しい言葉を聴かせた水で作った霜の結晶は美しい六花になる、という実験が流行りました。実験のA先輩がそれはあり得る、と教えてくれました。
「実験っていうのはとてもデリケートだから、良い気持ちのときにやった方が、操作が丁寧になって、いいデータが取れる。」(語り口調は忘れました。内容はほぼ合っていると思います。)
 この話は、実験の結果を、水にも心があると解釈しています。科学好きから見ると、似非科学で人を騙そうとしているひどい話に見えます。

 先日、雪の画像を探していて、久しぶりにこの話についての議論を見ました。
『「水からの伝言」を信じないでください』
田崎晴明氏の記事です。
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/fs/

 このとき、小林禎作先生の本を読んだ直後だったので、違う事を思いつきました。
 小林禎作先生は、双晶という視点を持ってから、双晶の雪の結晶が意外とたくさん降っている事に気付きます。
 観察の結果は、観察者の影響を受けます。心を落ち着けても、今度は理論や過去の経験などの『視点』が、観察結果に影響しているかもしれないのです。人間には見たいものが見えているとすれば、水に心があると言う人と、何か発見したいと期待する科学者は、程度の差こそあれ、どちらもきちんと観察出来ていない事になります。
 科学って、実は科学者のセンスに依存してしまう不確かなものかもしれません。

 小林ダイヤグラムしか見たことがなかった私は、Libbrecht 先生の本の写真でも屏風形を見てたのに、印象に残っていませんでした。だから、中谷ダイヤグラムの屏風形を見て、初めて見たような気がしてしまいました。小林ダイヤグラムの意味は、温度湿度固定で単結晶の基本形を調べたもの。範囲外には御幣形とか、双晶核の形成確率の高いエリアとかあるはずです。過飽和上限だって、雲粒領域なのかどうなっているのか読み取れません。更に、成長中に条件が変わった時にのみ現れる、屏風のような形は、このダイヤグラムには載りません。そんなことは考えもせず、分かったような気がしてしまうのです。

 小林禎作先生の本を読んでいてモヤモヤと感じていた危険をはっきりと認識しました。気をつけなければと気付かされました。

 そういう訳で、Libbrecht 先生の本をもう一度借りなおしてきました(^-^)