魔女の小さな冒険

魔女のちいさな探検

ゆっくりゆっくり進みます。

小林禎作先生の話だと

(ネタバレ注意!)
「雪の結晶はなぜ六角形なのか」 小林禎作著 ちくま学芸文庫

 借りてきました!読みました。
 今までよくわからなくてモヤットしていた人工雪について、分かりやすい概要がありました(^-^) 本はありがたいですね!雪の結晶観が大きく変わりました。
 樹枝つき角板の説明で、角板をどの温度にするのかと思ったら、雪の落下を考えて、樹枝より低温側としていました。言われてみればその通り(@o@) 天からの手紙は、そうやって読むのですね!


-----------(飛ばしてね)
 この本は、小林禎作先生が研究してきた話を、順を追って書かれてあります。研究話が好きな私から見ると、研究室の飲み会の時にちょっとづつ聞けるような、冒険話のようでもあります。いままでちらっと聞いていた話や、私が気づいていなかったこともたくさんわかりました。個人的に良かったところを覚書です。
 (p.51)初期の中谷ダイヤグラムは縦軸も横軸も温度でした。小林ダイヤグラムでは高温の針状結晶があるあたりに屏風形があって、写真も付いていて、衝撃的でした。
 (p.143)c面上のステップ前進速度の温度変化の図。ステップ高さは250Åに換算。ステップ速度が結晶成長の速さを意味するならば、c軸方向への結晶成長は、針結晶領域よりも角板領域の方が速いように見えます。しかし見方を変えると、角板領域では、c面上のステップは速く掃けて、c面が平らになろうとする力が働いています。
 (p.151)表面濡れを顕微鏡写真。この実験では、濡れは純水ではなく、沃化アンモニウム水溶液であろうと推測しています。沃化アンモニウムは、氷の結晶核を作るために沃化銀を使っているので、その時のもの、そして、沃化アンモニウム水溶液に水蒸気が付くと、水溶液が最適な濃度よりも薄くなるので氷として排出するとしています。VLSの触媒の解釈が良かったです!これをよく勉強したら、佐崎元先生の実験が理解できるのかも!
 (p.157)双晶角柱を発見!中谷先生の頃は氷の双晶は無いと言うのが定説だったそうです!ここから、分子模型を使って、各種双晶を含む雪の結晶を考察していきます。すごく面倒くさそうな、c軸が70.5°の双晶の謎を、若き日の古川義純先生が解明した話も出てきます。
 (p.194)双晶発生の初期メカニズムを考案。微小結晶では立方晶の氷?_cが発生している仮説を立てます。この結晶の安定形である正八面体は各面がc面に対応、そしてその角度が70.5°。これだと、放射樹枝、立体樹枝、砲弾集合が一気に説明出来ちゃいます。ぞくぞくするね(≧∇≦) この結晶が発生する可能性は、オストワルドの段階法則で、ほんの小さい結晶のとき、表面の影響などであり得そうなど、この本を書いている段階ではまだ検証中でした。こっちの予想が先だったら、古川先生の研究は楽勝だったかもしれません(^^;
 それから、雪の結晶とは直接関係ないですが、ちょっとした疑問も解明しました。
 (p.198)紀元前150年、中国、燕の韓嬰『韓詩外伝』「凡草木花多五出 雪花独六出」
花は5弁が多いと言っています!花の基本は5弁って思っていたのですよ。6弁の花は、ユリなどのようにきちっと6弁出るように発生しているとか、5弁だったものが勢い余って6弁出ているとか。やはり、同じように感じている人がいるのですね。
 (p.209)「むつのはな」「りっか」呼び方登場。室町時代に『韓詩外伝』からの知識だろうと書かれています。私も「りっか」と呼んでいるのですが、中谷宇吉郎先生のグループは「ろっか」と呼んでいますね。
-----------(ここまで)

 さて、くるくる回る話ですが、小林禎作先生もウサギの毛に下から湯気を当てて作った人工雪の対称性の悪さに関して、こう述べています。

(p.51)
> 天然の雪の場合には、水平に近い状態で回転しながら落ちてくるので、どの枝にも平等に水蒸気が供給され、枝は対称的に発達する。


 回転で対称性が良くなっているっていう議論は、この時代には既にあったのですね。でも、これだけの記述では、この考察が中谷宇吉郎先生に聞いた説をそのまま受け継いだのか、自分で回転している所を確認したのかわかりません。先の実験で、螺旋軌道は、結晶の回転の証拠にはならないってわかりましたからね。

 それから、この人工雪のバランスの悪さ(p.44)。風車の形の実現可能性が上がりました!よっしゃ〜♪