魔女の小さな冒険

魔女のちいさな探検

ゆっくりゆっくり進みます。

答え合わせ 高野陽太郎 (心理学者)

 高野説の紹介と、自分の見え方の答え合わせです。前回の記事はこちら、
早咲の日記 2020/01/29/1974491806
イラストはこちら。
http://sasaki.g1.xrea.com/powerpoint/mirror.html

 高野説に関して明らかにおかしいところがあったらご指摘ください。

 鏡映反転の命題は、
「鏡に映ると、上下は反対にならないのに、左右が反対になるのは何故だろう?」
で、上下と左右を比較するところから始まるそうです。

 高野説では、まず『多重プロセス理論』を提唱します。この理論では、鏡映反転が左右の場合、左右反転と感じる原理は一つにまとめられないとし、左右反転の見え方を3種に分類しています。『視点反転』『表象反転』『光学反転』です。
 更に、見え方の個人差の有無で、『制御的な心理過程』と『自動的な心理過程』の2つに再分類します。
 

 『多重プロセス理論』は、鏡像が左右反転と感じられる場合に限定して、反転の理由を分類したものです。 
 『視点反転』は、鏡像の視線を想像します。
 『表象反転』は、鏡像の文字を記憶と比較します。
 『光学反転』は、左右方向と光学反転方向が一致した場合です。

 『光学反転』は、鏡面を反転面とする、物理的な反転です。これに対して、『視点反転』と『表象反転』は、心的操作が含まれます。
 心的操作を行うかどうかは、個人差が出ると予想されます。
 『制御的な心理過程』は個人差が大きいもの。
 『自動的な心理過程』は誰でも同じように考えるもの。
と分類します。

 500人程度のアンケート調査と、100人程度の実際に鏡を見せる調査から、『視点反転』は『制御的な心理過程』で、『表象反転』は『自動的な心理過程』であると結論しています。この違いから、『視点反転』と『表象反転』は別原理であって、これまで主流だった「単一の原理によって生み出される単一の現象」諸説より良いと主張しています。この論文では『光学反転』の実験についてふれていませんでしたが、「鏡像の自分との横並び」については、視点移動の心的操作が起こり得るとしています。ただし、結果は心的操作があっても無くても同じです。

 『多重プロセス理論』での、命題「鏡に映ると、上下は反対にならないのに、左右が反対になるのは何故だろう?」への回答は、
『視点反転』垂直方向を軸にして180°回転したと想像するから。
『表象反転』記憶を左右反転した画像と同じだから。
『光学反転』実物と比較して、左右反転しているから。
 すると命題は、「視点反転に関して、どうして垂直方向を軸にして180°回転するのか」となりますが、「相手の視点をとる社会的習慣から」としています。視点反転の条件は、実像の場合、左右が対称に近いこと、左右が相手の視点で決まること、としています。この条件を満たす鏡像を見た場合、実像と同じように左右を考えてしまって反転を感じます。

 高野説が現在の主流なのかわかりませんが、良さそうに思えるので、この説を基準に答え合わせをしていこうと思います。

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 さて、答え合わせです。私の見え方を『多重プロセス理論』で分類します。

『視点反転』
  私はあまり感じないタイプのようです。対面者の左右を考えなくてはいけない時に、想像で、服を着るように相手の左手に自分の右手を通すことはあります。ただ、瞬時に考えるのは無理です。

『表象反転』
  私が『経験』と表現したものは、表象反転のようです。
・時計の鏡像のみ見える場合で、12が上のとき(自動的な心理過程)
・幼児の書いた鏡文字(自動)
・手の形(制御)
・右手でラケットを持つとき(制御)
・着物の合わせや、左用の名札(制御)
・武術の稽古(制御)

『光学反転』
・鏡像と実像の文字盤が見える
・鏡像と隣り合わせになる
・3次元の座標軸

その他(左右反転しない場合)
・鏡に文字盤の映らない時計
・鏡を床に置く場合(制御的な心理過程)
・鏡の前で踊る(制御)
・時計の鏡像のみ見える場合で、12が下のとき(制御)
・時計の鏡像のみ見える場合で、3が上のとき(自動?)
・先生とした体操(制御)
・バックミラーに映る車の方向指示器(制御)
・自分の顔(制御)

答え合わせできないこと
フローチャート(判断の優先順位)
・『左右』が『時計の12と6』なのか『鏡の水平方向』なのか決められない
・上下の認識が左右に比べて強い理由
・人の視覚認識はほぼ2次元なのか
・どうして鏡文字を書く幼児がいるのか
・対人の左右反転を感じる人は、視点反転(思考)と表象反転(経験)のどちらが多いのか

結果
 私は鏡像を見るときに、相手の視点を想像せず、記憶に頼っていることがわかりました。視点反転と表象反転の分け方は、個人差があるようです。
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 その他の感想です。
 まず、わかった(と思う)部分だけ抜き書きしているので、これが高野説の全てではありません。
 ここで参考にしている高野先生の論文は、要点のみ分かりやすく書かれています。同雑誌内に、他説を唱える方々との議論も掲載されているのですが、丁寧に対応されています。一見わかりやすいので、自分がどう感じるのか先に考えておかないと、自分もそう思っていたような気になります。
 また、ホームページには、交差点にあるカーブミラーの像は、道のどちらに何があるか想像しづらいとありました。実際見てみたら、私も間違いました。
 私は入手していませんが、本には、床に置いた鏡では上下も左右も反転するように感じられる話も紹介されているようです。


参考:
高野 陽太郎・田中 章浩 (2008) 第3部: 高野説 多重プロセス理論による鏡映反転の説明 Cognitive Studies, 15, 536-541.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcss/15/3/15_3_536/_pdf/-char/ja
高野陽太郎ホームページ
http://folse.info/mirror-reversal/


==== 2020-06-30 12:19
『左右軸の従属性』上下・前後は独立に決まり、左右は上下前後に依存して決まる。理由は、ヒトの体が外見的にほぼ左右対称であるから。

『視点反転』は相手の視点を取るとしていますが、人以外でも左右対称に近いものは左右軸を最後に決めるので、『左右軸の従属性』を使っているように思えます。