魔女の小さな冒険

魔女のちいさな探検

ゆっくりゆっくり進みます。

米沢富美子の『ブラウン運動』

 米沢富美子先生の『ブラウン運動』を読みました。ずっと持っていたのに、今まで何となくちゃんと読めなかったのです。土井先生の高分子の本を読んでいたので、ブラウン運動とかランジュバン方程式は使えていたし、特に需要も感じていませんでした。

 この本はパラパラとしか見ていなかったので、変なイラストが載っている、くらいの印象しかなかったのですが、読んでみるといろいろ驚きの内容でした!
 まず、アインシュタインの時代まで、原子説はマイナーでした!特殊相対性理論の発表の時代だし、原子核爆弾のちょっと前の時代です。アインシュタインの拡散係数と温度をざっくり繋ぐ方程式も、
「もしこんな観測が為されたら」
と、ブラウン運動の事を知らずに論文発表していて、私が学生時代に下調べで無駄な努力をしていたことに気付きました(^^;
 アボガドロ数N_Aが原子論の証拠になり、N_Aを決るためにいろんなモデルや実験が為された事が書かれていました。今では空気は酸素分子と窒素分子でできているのは大前提なので、アボガドロ数に意味があるとか考えたこともありませんでした!

 それから、ゆらぎの定義がきっぱり載っていたのがありがたいです。ゆらぎは位置や力や速度などの、統計学的な平均値からの部分的・瞬間的なずれです。もやもやと分からないものの総称ではありません。量子力学に出てくる、位置や運動量が根本的に決まらない不確定性とは別次元の話です。
 ゆらぎは何となくわかっているつもりでしたが、人の話を聞いているとだんだん怪しくなってくるので、ありがたいです。

 これを読んでいて、ヘルムホルムの自由エネルギーがちょっと見えた気がしました。エネルギーEが一定のとき、E-STとすることで状態の区別ができるようになります。単なる変数変換と習いましたが、そもそもどうして理想気体の考察で変数がエントロピーだと決められるのかも理解できなかったので、これを機に何か掴めたらなと思いました。

 次は熱力学を読んでみます。

米沢富美子(1986). 『ブラウン運動共立出版