魔女の小さな冒険

魔女のちいさな探検

ゆっくりゆっくり進みます。

回転文字と鏡文字の読みやすさの違い

 前回の記事文字の上下と重力では、頭の中の文字の変形性を調べました。この記事では、実験9.~12.で見られた『回転文字と鏡文字の読みやすさの違い』を、私の擬神化モデルで説明します。これは考えてもわからないので、脳科学で似たような記事があるだろうとGoogleAIを質問攻めにしました。GoogleAIは飛躍のある話題をうまく繋げて答えてくれましたが、しょっちゅうハルシネーションも起こるので、考察力のあるDeepSeekで同じ質問を繰り返して確認しました。

 多幡先生と議論になった、「ヒトは文字を薄っぺらい3次元物体として認知しているのか、2次元の表面テクスチャとして認知しているのか」という話題も考察しました。

言葉の整理

 私の鏡像関連の記事では、幼児が上履きの左右の見分けがつけられない見え方を『左右反転同一視』(Mirror Invariance)と書いています。一般には『鏡像不変性』と翻訳されています。

 この記事では文字を色々な方向に回すので、回し方を整理しておきます。

  1. 普通に見る、正位置、「
  2. 上下を逆にする、180°回転、上下逆、「(rotate(180deg))
  3. 鏡に映す、左右反転の鏡文字、鏡文字、「(scaleX(-1))
  4. 上下を逆にして鏡に映す、上下反転の鏡文字、上下逆の鏡文字、「(scaleY(-1))
  5. 横倒し、3時の方向に回転、90°回転、「(rotate(90deg))

 1、2、5は紙面上、2次元内での回転です。回転軸は文字と垂直です。「上下逆」「回転」というのは、時計の針のように文字を回した状態を指します。

 3、4は、「鏡文字」という言葉が入っています。これは鏡に映した、あるいは裏返った形状で、紙ごと裏返す3次元操作でできる形状です。

バステトの図鑑とナブーの辞書

 

 個体特定バステトは見たものの記憶を図鑑、識字ナブーは文字の辞書を持っています。

 バステトの図鑑の猫のページには、こちら向きの猫、ひっくり返った猫、歩く猫、猫パンチの動きなど、いくつか入っています。バステトの辞書には、猫を見るたびに猫のページの立体動画が増えたり修正されたりします。バステトは猫のしっぽを見ただけで、形と大きさ、動き、質感から「猫っぽい」と判定します。

 ナブーの辞書には「あ」のページには「あ」だけがかいてあります。左右は見た通り正しく保存されます。鉛筆でなぞった文字は、横線や点の数なども正確に記憶されます。いろんなフォントや手書き文字を見ても、フォントを気にせず「あ」と判定します。

左右反転同一視

 『左右反転同一視』は、左右逆転したものを同じであると判別する能力です。右向きの猫を覚えたら、次に左向きの猫を見たときも同じ猫だとわかります。人の顔のホクロや片笑いなどが左右反転していても同じ人だとわかります。これは、右向きの猫を見たときに、バステトの図鑑に右向きと左向きの両方が掲載されるという意味ではありません。『左右反転同一視』は、右向きの猫の記憶だけで左向きの猫も同じだと判定できます。少ない学習で天敵や獲物を判断できる、バフ(生存に有利な能力)です。

AI先生に聞いてみた

共通の画像処理

 目で見たものは画像として後頭葉(V系)で補正され、外側後頭複合体(LO野前半)で図形として物と背景が切り分けられます。LO野前半までは識字ナブー、個体特定バステト、背景ヘカテで共通で、そこから先はそれぞれで分析します。

 頭の中で、文字が2次元なのか3次元なのかという問題をGoogle先生に聞いてみました。Google先生によれば、LO野では文字も物も切り抜くので、紙のように厚みのない3次元として扱われるそうです。(私の見解は後ほど。)

バステト、ナブーの共通前処理

バステトとナブーの脳内処理

 バステトとナブーは2段階で画像処理します。第1段はLO野前半で切り抜いた形から解析できる物やテクスチャを選択します。第2段では選択したものの詳細を図鑑や辞書と照合します。バステトは第1段では正位置判定をし、第2段ではデフォルトで左右反転同一視をします。ナブーの第1段も正位置判定をし、第2段はデフォルトで正位置判定をします。バステトの次の処理は、左右のわかるクヌムです。クヌムは今回、議論しません。

バステト、ナブーの分業処理

 バステトは顔、体など統合判断します。(ここでは形状判断だけに限定します。)バステトは物によって図鑑の脳領域が違うようです。バステト第1段はLO野後半も含みます。バステトはヤヌスへの速報です。クヌムからは詳細が送られます。

バステト
第1段 顔(後頭葉顔領域/OFA) 「目や鼻のパーツ」を探す
体(身体外側領域/EBA) 「関節や四肢の形」を探す
道具(後頭側頭皮質外側部/LOTC) 「掴みやすそうな形(細長い、取っ手がある)」や「尖った先端」などの特徴を探す
第2段 顔系列(紡錘状顔領域/FFA) 顔のパーツから「誰か」を特定
身体系列(身体外側領域/EBA) 手足や姿勢から「人だ」「何をしているか」を特定
道具系列(後中側頭回/pMTG、下頭頂小葉/IPL) つかみやすさや用途から「ペンだ」「ハンマーだ」を特定
クヌム
  (下側頭葉前方部/aIT) シビアな鑑定、ほくろの位置など左右差がわかる

 ナブーの辞書は第2段にあります。ナブーの辞書は基本的に左脳しか使わず、正位置の文字だけ読みます。ナブー第2段から言葉トトへ判読結果を直接送ります。

ナブー
第1段 LO野後半、後頭側頭溝/OTS 文字らしい線の抽出(パーツのえり分け)
第2段 視覚単語形態領域/VWFA 文字の同定・綴りの認識、サイズ不変性
バステト、ナブーの知覚の流れ図

 バステトとナブーの流れ図を作りました。

バステト、ナブーの知覚の流れ図

 バステトは言葉がなくても理解できますが、ナブーは辞書と言葉の連動が重要です。図では、バステトの判定は知覚から言葉、ナブーの判定は言葉から知覚と矢印の向きを変えました。

 ナブーはもともとバステトの一領域を鍛えたものです。ナブー第2段は基本的に左脳で処理されますが、右脳にも対応する領域(右脳ナブー)があり、左脳だけでは処理できなかった場合、右脳ナブーも解放されます。右脳ナブーは大まかなパターン認識や類推、左右反転同一視を担当しています。

バステト、ナブーの情報処理

 バステト、ナブーの流れ図に絵を入れるとこんな感じです。前処理の図形作成の段階で、目で見た映像の中から物っぽいものを認知します。第1段で、動物だ!文字だ!と認知します。第2段で、うちで飼っているタマちゃんだとか、ひらがなの「あ」だとか認知します。映像にだんだん意味が付加されていく感じです。正確に言うと、バステトの第2段では「よく知っている」とだけ判定されて、連想経路から言葉や感情、思い出に信号が行って初めて「タマちゃん」と認知されます。

鏡文字の解読

 鏡文字は、まず上下が合っていても「ち」と「さ」が判読できなくなります。更に鏡文字を回転させて逆さまにすると、「し」と「つ」など方向の違うものまで判読できなくなります。文字の見え方には、回転耐性はあっても鏡文字への耐性、特に上下逆の鏡文字への耐性は弱いようです。家族に試してもらった実験でも、家族も同じ傾向がみられました。

左右反転同一視の抑制の解除

 識字ナブーには『左右反転同一視の抑制』がかかっているため、デフォルトでは正位置しか読めません。文字を学習するときは正位置しか覚えないのに、鏡文字がなぜ読めるのか、AI先生方に聞きながら考えました。

左右反転同一視の抑制の解除

 まず、鏡文字の「」を見た場合です。視覚からは鏡文字の「」が見えています。鏡文字はナブー第2段の『左右反転同一視の抑制』の解除で「あ」と解読でき、言葉トトに届きます。ところがトトからナブーの記憶を参照した時、記憶の正位置の形「あ」が見えている鏡文字の「」と違います。ここで違和感パンが出てきます。

鏡文字の心的回転
文字の左右が反転していることを確認

 違和感は意識ラーに届きます。ラーは知覚と意識のゲートヤヌスに再考命令を出し、ヤヌスは空間思考ヘルメスを指名して考察させます。ヘルメスは見えている文字「」を横にめくって左右が逆だと確認します。

 ここで、「文字をめくる」という想像を使いました。文字をめくる、あるいは裏返しにするのは、文字が脳内で3次元的に扱うことができるということです。文字を2次元と捉えている人は、想像で文字をめくることはできません。

傾いた文字の解読

 文章を時計回りに回転していくと、0時から3時の方向まで、90°まで傾けてもすらすら読めます()。ところが回転が4時の方向を過ぎると読む速度が遅くなり、4時から6時の方向(180°)まで、同じような感覚でゆっくり読みになります() 。回転した文字は文字の上下方向が自分の上下方向と合わなくなると、ゆっくり読みになるようです。

90°まで傾いた文字

 90°まで傾いた文章は、傾いていないときとほぼ同じくらいすらすら読めます。これは、視覚ホルスと識字ナブーの第1段で自動的に画像を補正しているからと思われます。図ではホルスとナブーで2度補正をかけています。AI先生によると、視覚側の補正は60°くらいが限界で、図形回転はいくらでも回せるとのことなので、2度がけしました。

傾いた文字の心的回転補正

 作画では空間思考ヘルメスが「反時計回り」と言っていますが、文字の傾きに合わせて回しているだけで、意識には上りません。意識の上ではあくまでホルス、ナブーの仕事です。

180°回転した文字

 180°回転した文章は、正位置ほど速く読めませんが、音読できる速さでは何とか読めます。一度「本が逆さまだな」と認識すると、あとは自動的に逆さま文字が読めるようになります。このときのヘルメスは、最初一度意識しないと仕事をしません。また、読み聞かせなどで逆さま文字に慣れている人は、最初からヘルメスが仕事をするので、傾いた文字との読みやすさの違いが分からないと思われます。

180°回転した文字の心的回転補正

上下反転の鏡文字の解読

 上下が逆の鏡文字「」の読み方を3通り考えました。

  1. 文字を時計周りに180°回転させて、左右反転同一視の抑制を解除する
  2. 下から上にめくりあげる、または手前に倒す
  3. 文字内の要素(+, l, -, o, T, L, \, /, ...)をパズルのようにぐちゃぐちゃかき混ぜる

 1.は、文字が2次元だと感じる読み方です。空間思考ヘルメスは平面上の回転だけを担当し、左右反転は文字ナブーが担当します。2.は、文字が3次元だと感じる読み方です。空間思考ヘルメスが文字を直接上下にめくって正位置に戻します。3.は、ナブーが、左右反転同一視と同じバステトの古い回路を開放して、福笑いのようにパーツに関連する文字の候補を出してきます。

 1.の読み方なら、上下が逆の鏡文字「」と「」を間違えます。2.の読み方なら、上下が逆の鏡文字「」と「」を間違えません。3.の読み方なら、偏と旁が逆になっていても何となく読めちゃいます。

2次元の回転と左右反転同一視の抑制の解除

 1.の読み方の流れ図です。

上下反転の鏡文字1

 上下が逆の鏡文字「」をまずヘルメスが180°回転させます。回転させても「」は鏡文字です。次にナブーがまず正位置で辞書を引き、鏡文字「」に匹敵するものがないため左右反転同一視の抑制を解除して「あ」と判読します。手順としては2回も変換がかかって面倒なのですが、私は無意識にこの読み方をしています。

3次元のめくり上げ

 2.の読み方の流れ図です。

上下反転の鏡文字2

 横書きの文字の場合には、ちょっと意識して、行ごと上下を裏返します。縦書きの文字の場合には、1文字づつ裏返すので、すらすらとは読めません。

雰囲気で福笑いのように読む

 3.の読み方は流れ図を作っていません。文字のパーツをバラバラにして何となく読みます。トラの尻尾と足と耳がちらちらと見えて、きっとトラだろうと推測するようなものです。「クルミ」を上下逆の鏡文字にすると、「クルミ」なのか「ミルク」なのかわかりにくくなります。

まとめ

 文字の上下と重力で出てきた実験9.~12.の思考の違いを、流れ図で表現できました。横倒し、180°回転の文字は空間思考ヘルメス、鏡文字は識字ナブーが主に修正して読んでいます。

 文字が脳内で2次元なのか3次元なのかは個人差があります。その個人差の見分け方として、「さ」と「ち」など、鏡文字をヘルメスでめくりあげて読める人は3次元であると提案します。

 私の感覚としては、ヘルメスは2次元でも3次元でも回転には強いですが、反転に弱いです。文字の変形に関してはヘルメスは2次元平面内で回転しようとします。また、ヘルメスよりもバステトのほうが強いです。上下逆の鏡文字を見ると福笑いのようにパーツをバラバラにして何となく読んでいるように感じます。

雑記

 AIへの聞き取りでは、神経細胞がどう繋がっているのかとか、文字のパーツに反応するとか神経細胞の発火とかいろいろ聞いたのですが、まとめきれませんでした。最初aIT(クヌム)をバステト第3段としていたのですが、aITは脳内各所と連携したり、海馬のあたりに連想の神インドラまで登場してしまいました。インドラはリンゴを見たら、言葉、匂い、味、食感、食べたときのシャリシャリ音、前にリンゴを見たときの思い出など、あらゆる事を連想します。バステトの見たリンゴでもナブーの読んだリンゴでもトトが聞いたリンゴでも、インドラ経由で共通の思い出に接続します。

 ヘルメスは、主に頭頂葉辺りらしいです。想像と違ったのが、ヘルメスのパット見で数がわかる能力です。パット見で数える能力は、3~4個まではバステト・ナブー第1段と同じ、ものを捕らえる側頭葉後部らしいです。そして、4個以上は頭頂葉の視線誘導能力を組み合わせて、5個以上もパット見で数がわかるようになります。これは、2歳児と3歳児で紙に描いた丸を数えられる数が違うってことに対応していて、そうかもしれないと思いました。

 ナブーは、学習の時はアセチルコリンが出ているから、左右反転同一視の抑制が解除されている可能性がある、という話も出ました。だから、左脳の精密な記憶と右脳のおよその記憶が同時に作成されます。ただし、右脳ナブーと同じ位置にバステトの顔判定もいるらしいので、右脳ナブーは本当にいるのかはわかりません。

 この記事でナブーは、一文字づつ読んているように書いていますが、実際は数文字づつ読んでいます。英語なら単語毎です。単語毎にグループ化して注目するのはヘルメスの力を借りています。日本語の場合は、ナブーがおよそ知っている単語で区切りをつけます。区切りの部分がわからないと、トトが区切りを直すことになります。「ここではきものをぬいでください」のように、「きもの」か「はきもの」か区切りを直すのに、区切りヘルメスも意味トトも総動員です。

 日本語の漢字はフォントだと一万文字、辞書だと五万文字もあるとされていて、外国人から日本語難しいと思われがちです。でも実は、英単語もネイティブだと2万語、辞書だと60万語くらいあるので、ナブーの辞書には1万くらいは登録されています。どちらの言語にせよ、ナブーの記憶力はすごいです。

 空間把握能力ヘカテも実は出てきます。ヘカテには、台形に見える壁や天井を遠近法から四角く補正する力があります。また、部屋の家具などの配置を短期記憶できます。ナブーはこの能力を借りて、読書のときの本の文字列を把握しています。また、本を手で持ってぐらぐらしても、台形補正で文字は真っすぐに見えます。ヘカテは海馬傍回にいます。

 小1の時、理科の朝顔の観察スケッチで、先生が「見た通りに描きなさい」と指示しました。私は、横から見ると葉っぱが細長く見えたり、一部裏返っているなど発見して、細長く描きました。他の子たちは、葉っぱを正面から見たように描いていました。これは今考えると、私はホルスが見た通り、他の子たちは、バステト、あるいはヘカテが台形補正した通りに描いたので、どちらも「見た通り」描いたことになります。人は世界をどう見ているのかって話になりますね。

 

参考、使用:

 元記事:ヒトの感覚・認知を擬神化したら
     左右感覚を説明するための座標系
     文字の上下と重力

 画像生成:Google Gemini
 画像ソフト:Krita、FireAlpaca
 ディスカッション:GoogleAI、DeepSeek
 鏡像認知:鏡像認知 - 脳科学辞典
 左右反転同一視:Stanislas Dehaene(2010) NeuroImage 49(2), pp.1837–1848